2022年 新年のご挨拶
注1)2023年9月1日より、APEX GROUPのメンバーファームとして、Apex Group Japan税理士法人 に改組しました。
明けましておめでとうございます。謹んで新春のご挨拶を申し上げます。
日頃は、弊事務所に対し格別のご理解とご協力を賜り深く感謝を申し上げます。
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令和3年(2021年)を振り返って
~令和4年(2022年)の中小企業、オーナー企業及びベンチャー企業の展望~
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令和3年の経済状況を顧みますと、予想以上に長引くウィズコロナの一方、経済活動再開の動きが国内外
で顕著になってきました。その結果、供給や生産体制が追い付かず、部品・原材料等の供給不足、資源価格
の高騰など混乱が生じています。
コロナ第6波(もはや何波目かよく分からないところまで来ましたが..)としてオミクロン株が日本でも猛威を
振るうのか心配なところではありますが、ワクチンが提供され、軽症者向けの飲み薬が手に入るようになって
きた現状を鑑みると、回復スピードに多少ブレが生じたとしても、2022年着実に経済が回復基調を歩むものと
思います。
そして、2022年の注目点としましては、やはり米中の動向ではないでしょうか。
1)アメリカ
株高、不動産高のピークアウトが訪れるのか、そして利上げの時期はいつなのか、世界経済への影響は
必至で大きな流れが変わる節目となるのではないでしょうか。
2)中国
恒大集団など不動産会社における信用不安が世界金融にどの程度影響を与えるか今一つ見えてきませんが、
大きな懸念事項であることに間違いありません。また中国の社会主義市場経済という制度がどのように作用
するのか興味深いところです。
3)米中対立の副産物?!(ハイテク・サプライチェーンの再構築・内製化)
世界経済の発展の中で、良いものを安く、安定的に大量に生産できるところに世界中の企業が発注し、製造供給
されてきた流れが大きく変わってきました。自国第一主義が唱えられ、政治的なリスクを加味することで、発注先
の国を分散させ、また国内製造に舵を切る動きも大きな流れの変化でしょう。日本においても国内製造の増加は
歓迎されるべき流れと言えるでしょう。唯一コスト上昇による物価高への影響が気になるところですが..
さて、国内に目を向けるといつの間にか首相も変わり、岸田政権となりました。
そこで俄かに注目されているのが、『新しい資本主義』というコンセプトのもと、いかに賃上げを行い国民を豊かに
するのかという議論です。
ちょうど2年前、新年のご挨拶メールにて、サンフランシスコでは、「年収1400万円の4人家族は低所得者に分類」
というニュースを取り上げましたが、それから2年が経過し、日本は依然として一人当たりGDPの増加率が低く賃金
水準がほぼ過去20年、いや30年近く変わっていないのが現状です。コロナ禍の中、先進国の大半がこのような
状況であれば、問題視されないのかもしれませんが、諸外国と比べて日本の一人負けのような状況に、世間が注目
し始めています。
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賃金・人的資本に関するデータ集
令和3年11月 内閣官房 新しい資本主義実現本部事務局 作成
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私自身、社会人になってから約30年前、インフレというものを経験したことがなく、デフレ経済が当たり前で、賃金水準
も大きく変わらないのが当然でしたが、これからの労働人口の減少と超高齢化社会、社会保障制度に対する不安を
抱える日本において、喫緊の課題ではないでしょうか。
先進国だとか、ジャパン・アズ・ナンバーワン懐かしいねだとか、飽食の時代、モノ余りの時代などと言われ、基本的
な生活という基準で考えると、不自由のない幸せな先進国の一員だと何となく安心しているうちに、いつの間にか日本
はデフレ経済のぬるま湯の中で、相対的に貧しくなってきているとは、ちょっとショックです。
2020年の1人当たりGDPでは、世界で24番目に位置しています。
順位 | 国名 | 単位:US$ |
1位 | ルクセンブルク | 116,921 |
2位 | スイス | 87,367 |
3位 | アイルランド | 85,206 |
4位 | ノルウェー | 67,326 |
5位 | 米国 | 63,358 |
6位 | デンマーク | 61,154 |
7位 | シンガポール | 59,795 |
8位 | アイスランド | 59,643 |
9位 | カタール | 54,185 |
10位 | オーストラリア | 52,905 |
11位 | オランダ | 52,456 |
12位 | スウェーデン | 52,129 |
13位 | フィンランド | 48,786 |
14位 | オーストリア | 48,593 |
15位 | 香港 | 46,657 |
16位 | サンマリノ | 46,282 |
17位 | ドイツ | 46,216 |
18位 | ベルギー | 44,688 |
19位 | イスラエル | 44,181 |
20位 | カナダ | 43,295 |
21位 | ニュージーランド | 41,165 |
22位 | イギリス | 40,394 |
23位 | フランス | 40,299 |
24位 | 日本 | 40,089 |
25位 | アラブ首長国連邦 | 38,661 |
26位 | アンドラ | 36,631 |
27位 | マカオ | 35,621 |
28位 | プエルトリコ | 32,645 |
29位 | 韓国 | 31,638 |
30位 | イタリア | 31,604 |
31位 | マルタ | 28,955 |
32位 | 台湾 | 28,358 |
33位 | スペイン | 27,179 |
順位など無意味で、比べても仕方がない、日本国民が幸せであればそれでいいのではない?かという考え方も あると思いますし、それも正論だと思います。
しかしながら、みんな気付かないうちに日本が経済的に地盤沈下を起こし(日本沈没というドラマが昨年ありましたが..)、 当たり前の平和な暮らしが脅かされることになっては大変です。
では、どのように個人の賃金を上げていくのか?
私は専門家ではありませんので、この年末年始専門家の方々が数多く見解を述べているのを拝読し、年始恒例の 「朝まで生テレビ」は、眠たいので録画を元旦のお昼にチェックし、大前研一氏の新著が書店に並んでいたので思わず 購入し、ななめ読みした結果、異論の無いところとしては
『IT技術による業務効率化』 と 『雇用の流動化』
が労働生産性の向上をもたらし、賃上げには必要ということです。
目新しさゼロですが、ここでいうITによる効率化は、不採算人員の整理(すなわち雇用の流動化)とセットで行うことを 意味しています。結果的に、失業率の上昇を招くのですが、これが賃金引上げにはどうも不可欠のようです。
解雇や人員整理について、雇用に関する法制度の改革が必須です。そして失業者に対する今まで以上に手厚い セーフティーネットを国が用意するという施策もセットで必要となります。
では、この雇用問題に手を付ける兆しがあるかというと、そのような議論は聞こえてきません。
どちらかというと、産業界に蓄えている内部留保を原資に賃上げを期待し、税制でインセンティブを設けるといった、 本質論とは言えない部分で議論されています。
(首相官邸ホームページ (kantei.go.jp)より)
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令和3年11月26日
第3回新しい資本主義実現会議より抜粋
政府としては、民間企業の賃上げを支援するための環境の整備に全力で取り組みます。
第1に、従業員お一人お一人の給与を引き上げる企業への支援を強化するため、 企業の税額控除率を抜本的に強化することを検討し、今年末の税制改正大綱で 決定いたします。
第2に、税制の効果が出にくい、赤字の中小企業の賃上げを支援するため、 ものづくり補助金や持続化補助金において、赤字でも賃上げした中小企業への 補助率を引き上げる特別枠を設けます。
第3に、人的資本への投資を抜本的に強化するため、3年間で4,000億円 規模の施策パッケージを、新たに創設し、非正規雇用の方を含め、職業訓練、 再就職、ステップアップを強力に支援することとし、一般の方からアイデアを 募集し、良いものに仕上げてまいります。
第4に、中小企業の賃上げの環境を整備するため、下請Gメンの倍増を図り、 取引適正化のための監督を強化いたします。
第5に、政府調達において、賃上げを行う企業に対して、加点を行うなど、 調達方法の見直しを行います。
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年末年始、専門家の皆さんが概ね同意見で必要だと言っている、雇用の流動化については触れられていません。 唯一、第3の下線部分に何か意図的な含みがある点が気になりますが..
結局、ニワトリが先か卵が先か論で、とにかく賃上げありきで、多くの企業が実施すれば、生産性を高めるしかなく なる企業が、方法論は別として何とか現在の法律の枠組みの中で、自助努力で、雇用調整を進めていくことに期待 するという狙いがあるのかもしれません。
1月4日の日経新聞1面の『成長の未来図』という特集でも、『人材移動こそ革新の勝機』というメッセージが大見出し となっています。
色々なメディアで、共通したソリューションが唱えられているということは、個人的な期待を込めて、もしかすると 大きなうねりとして、2022年が変化が生じる起点になるかもしれません。
今回中小企業にフォーカスした内容ではありませんでしたが、中小企業の賃金相場は大手企業がリードしつつ、 同業他社の水準に足並みがそろっていきますので、そういう意味でも大手企業が政府の施策に賛同し、賃上げに 動けば、早晩追随せざるを得なくなります。
その時に備え、賃上げのための余力を蓄えるべく、今後生産性向上を強く意識して経営を行うことが重要ではない でしょうか。
ひいては、結果的に一人当たりGDPの上昇に繋がることでしょう。
いずれに致しましても、クライアントの皆様におきましては、外部環境の良し悪しに一喜一憂することなく、逞しい 企業家精神のもと、2022年が更なる成長の年となることをお祈りするとともに、AXESS総合会計事務所所員一同、 精一杯サポートさせて頂く所存です。
本年も何卒宜しくお願い申し上げます。
2022年1月吉日
AXESS総合会計事務所 阪口 雅則